
※「Dify」は米国LangGenius社の登録商標です。
プログラム知識は不要。業務のAI化を、つくりながら考える。
Dify(ディファイ)は、AIアプリケーションを画面上の操作だけで組み立てられるオープンソースの開発フレームワークです。
チャットボット、文章の自動生成、複数ステップの業務処理まで、コードを書かずに構築できます。
ここでは、Difyで何が作れるのか、どう作るのか、導入前に何を知っておくべきかを順に説明します。
生成AIを業務で使おうとすると、これまではAPIを呼び出すプログラムを書き、データの前処理を実装し、画面を用意する必要がありました。Difyはこの一連の作業を部品化し、画面上で組み立てられるようにしたツールです。
Difyの中心にあるのは、「ブロックをつなげてAIの処理を組み立てる」という考え方です。ユーザーの入力を受け取るブロック、社内文書を検索するブロック、AIに文章を書かせるブロック、条件によって処理を分けるブロック——これらを線でつなぐと、それがそのままAIアプリとして動きます。
作ったものはすぐに試せます。画面上で質問を投げ、思った回答が返らなければ指示文(プロンプト)を書き換えて、また試す。この試行の速さが、Difyを使う最大の意味です。要件を固めてから作るのではなく、作りながら要件を固めていけるようになります。
| 従来のAIアプリ開発 | Difyを使った開発 | |
|---|---|---|
| 必要なスキル | プログラミング、インフラ構築 | 業務知識と、AIへの指示の書き方 |
| 最初の動くものができるまで | 数週間〜 | 十数分〜数時間 |
| 修正のしかた | コードを直して再デプロイ | 画面上で書き換えて即確認 |
| 主な担い手 | 開発部門・外部ベンダー | 業務部門の担当者 |
| 向いている用途 | 大規模・高度に固有な要件 | 業務単位の改善、試行と検証 |
Difyのアプリは、目的に応じて4つの型から選んで作り始めます。単純な会話から、条件分岐を含む複数ステップの業務処理まで、同じ画面の中で段階的に高度化できます。

チャット形式で、質問に答える
あらかじめ役割と回答方針を指示しておくと、ユーザーの質問に対話形式で応答。社内ドキュメントを読み込ませれば、自社のルールに沿った回答をさせられます。
入力を一度渡して、文章を出力する
会話ではなく、一回の処理で結果を返す型です。決まったフォーマットの文章を、都度AIに指示を出さずに生成できます。入力欄の項目もこちらで定義できるため、使う側は空欄を埋めるだけで済みます。
AIが自分で手順を判断して、道具を使う
処理の順番をこちらで決めきらず、AIに判断させる型です。「何を調べ、どの道具を使い、次に何をするか」をAI自身が組み立てます。検索、計算、画像生成といった外部ツールを与えておくと、必要に応じて呼び出します。
条件分岐と複数ステップを、こちらで設計する
処理の流れを自分で線でつないで組み立てる型です。「AIに要約させる → 内容で分類する → 分類ごとに別の処理へ回す」といった多段の処理を、意図した通りの順番で確実に動かせます。4つの型の中でもっとも作り込めます。
アプリの型を選んだあと、実際の作り込みで使う機能群です。導入を検討する際は、この一覧が自社の要件を満たすかどうかが判断の中心になります。
プログラム知識は不要です。画面上の操作だけでアプリを組み立てられ、やりたいことを文章で指示して雛形を自動生成させることもできます。
社内規程、マニュアル、サポート履歴、Webサイトなどをナレッジとして登録すると、その内容に基づいた回答が得られます。一般的なAIでは答えられない自社固有の情報を扱えるようになります。
ChatGPT(OpenAI)、Claude(Anthropic)、Gemini(Google)、Azure OpenAI など、複数のモデルを切り替えて利用できます。用途ごとに、精度重視のモデルとコスト重視のモデルを使い分けられます。
提供元のクラウドを使うほかに、AWS・Azure・GCP、自社オンプレミス環境に自前で構築できます。外部にデータを出せない業務でも、要件に合わせた構成が取れます。
ソースコードが公開されているため、自社の要件に合わせた改修や、社内システムとの独自連携が可能です。
Web検索、社内データベース、Wikipedia などの外部ツールを組み込み、AIの回答に最新情報や社内データを反映させられます。
作成したアプリは、画面から使うだけでなく、外部から呼び出すためのAPIも自動的に用意されます。既存の社内システムやグループウェアに組み込めます。
AIとユーザーのやり取りは記録され、利用状況を分析できます。どの質問に答えられていないかが見えるため、改善の手がかりになります。
「操作だけで作れる」と言われても実感が湧きにくいところなので、実際の手順を追って説明します。もっとも単純なチャットボットであれば、この5ステップは十数分で一周できます。
チャットボット、テキストジェネレーター、エージェント、ワークフローの4つから、目的に近いものを選びます。あとから作り変えられるので、最初は単純な型から始めるのが確実です。
このように、役割と守るべき方針を文章で書きます。ここがアプリの品質をもっとも大きく左右します。
自社の情報に基づいて答えさせたい場合は、PDFやテキスト、Webページをナレッジとして登録します。アップロード後、AIが検索できる形に自動で変換されます。
編集画面の横で、すぐに質問を投げて動作を確認できます。回答がずれていれば、プロンプトの表現を変え、参照資料を足し、また試す。この往復を数回繰り返して精度を上げていきます。
作ること自体は簡単で、実務で使える精度に持っていく調整が仕事の中心になります。
社内向けのURLとして公開するか、自動生成されたAPIを使って既存システムに組み込みます。公開後は利用ログを見ながら、答えられていない質問を拾って改善を続けます。
Difyは動かす場所を選べます。扱うデータの機密度、社内の運用体制、初期の手間のかけ方によって、適した形が変わります。
| 提供元のクラウド版 | パブリッククラウドに構築 | 社内オンプレミスに構築 | |
|---|---|---|---|
| 使い始めるまで | 登録すればすぐ | 数日 | 環境準備次第 |
| データの置き場所 | 提供元の環境 | 自社のクラウド環境 | 社内 |
| 運用の手間 | ほぼ不要 | 自社で管理 | 自社で管理 |
| カスタマイズ | 制限あり | 可能 | 可能 |
| 向いているケース | まず試したい/機密度の低い用途 | 全社利用、既存クラウド資産との連携 | 外部にデータを出せない業務 |
Difyは手軽ですが、手軽さと引き換えに理解しておくべき前提があります。ここを飛ばすと、作ったあとで止まります。
Dify自体をオープンソース版で自社構築する場合、ソフトウェアの費用はかかりませんが、ChatGPTなどのAIモデルを呼び出す料金は使った分だけ発生します。処理する文章量に比例するため、利用が増えると費用も増えます。試験導入の段階から、想定利用量での試算をしておくのが安全です。
数十分で動くものはできます。ただし、期待する精度で安定して答えるまでには、指示文の調整と参照資料の整備が必要です。この作業に一定の時間を見込んでください。
古い規程や重複した資料をそのまま登録すると、AIは古い内容で答えます。ナレッジに何を入れ、誰がいつ更新するかを先に決めておく必要があります。
もっともらしく間違える性質があります。金額の算定、法令の解釈、人事上の判断など、誤りが取り返しのつかない領域では、最終確認を人が行う運用を組み込んでください。
Difyのオープンソース版は、Apache License 2.0 をベースに追加条件が付いた独自ライセンスで公開されています。自社利用では問題になりにくい一方、外部への再提供を伴う使い方には制限があります。条件は改定されることがあるため、導入時点の最新のライセンス文書を確認してください。
本文の流れの中では説明しきれない、個別の疑問をまとめました。
はい、アプリを作る操作自体にコードは不要です。ただし、実務で使える精度に仕上げる段階では「AIに何をどう指示すれば意図通り動くか」を試行錯誤する作業が中心になります。求められるのはプログラミングよりも、対象業務の理解と、手順を言葉で正確に書き下す力です。
かかる費用は「Dify自体の費用」と「AIモデルの利用料」に分かれます。オープンソース版を自社環境に構築する場合、Difyのソフトウェア費用はかかりませんが、構築と運用の工数、サーバー費用が必要です。提供元のクラウド版は利用規模に応じた料金体系です。加えて、どちらの場合もChatGPTなどのAIモデルを呼び出す料金が使った分だけ発生します。
利用するAIモデルの提供元と契約形態によって変わります。法人向けのAPI経由の利用では、送信したデータをモデルの学習に使わないと明示している提供元が一般的ですが、条件は提供元ごとに異なります。外部にデータを出せない要件がある場合は、自社環境に構築したうえで社内で動くモデルを使う構成も取れます。導入時に、利用予定のモデル提供元の最新の規約を必ず確認してください。
できます。作成したアプリには外部から呼び出すためのAPIが自動的に用意されるため、社内システム側からDifyのアプリを呼び出す形で組み込めます。逆方向、つまりDifyから社内データベースや外部サービスを参照させることも可能です。ただし連携部分は個別の設定・実装が必要になるため、画面操作だけで完結する範囲ではありません。
用途によって変わります。複雑な判断や長い文書の読解が必要な処理は高性能なモデル、単純な分類や定型文の生成は軽量で安価なモデルというように、処理ごとに使い分けるのが実際的です。Difyはモデルを後から切り替えられるので、最初から決めきる必要はありません。同じアプリで複数のモデルを試し、精度と費用の兼ね合いで判断するのが確実です。
提供元のクラウド版を使えば、登録してその日のうちに最初のアプリを動かせます。自社環境への構築を伴う場合は環境準備を含めて数日規模です。ただし「動くものができる」までと「社内で日常的に使われる状態になる」までは別で、後者には参照させる資料の整備、精度の調整、利用者への案内が必要になります。
作るのは業務を分かっている人、環境を管理するのは情報システム部門、という分担が機能しやすい形です。プロンプトの調整や参照資料の入れ替えは業務部門が自分で回せると改善が速くなります。一方、構築環境の保守、アクセス権の管理、モデル利用料の監視は情報システム部門側で持つ整理が安全です。
利用ログから該当のやり取りを確認し、原因に応じて手を入れます。参照資料に情報が無かったのならナレッジを追加し、資料はあるのに拾えていないなら文書の分け方を見直し、情報は正しいのに答え方がずれているならプロンプトを修正します。この切り分けができるよう、ログを定期的に見る運用を最初から組んでおくのが有効です。
汎用のチャットAIは「利用者が毎回自分で指示を書く」前提の道具です。Difyで作るのは「指示と参照資料をあらかじめ組み込んだ、特定業務専用の道具」で、利用者は質問や項目の入力だけで済みます。誰が使っても同じ品質の結果になり、社内固有の情報に基づいて答えられる点が主な違いです。両者は排他ではなく、汎用AIを全社に配りつつ、頻度の高い定型業務をDifyでアプリ化する併用が現実的です。
| LLM | 大規模言語モデル。ChatGPTやClaudeなど、文章を理解して生成するAIの本体 |
| プロンプト | AIに与える指示文。役割、方針、守るべきルールを書く |
| RAG | 検索して答えさせる仕組み。社内文書から関連箇所を探し、それを根拠に回答させる |
| ナレッジ | AIに参照させるために登録した文書やデータの集まり |
| エージェント | 手順をAI自身に判断させ、外部の道具を使わせる仕組み |
| ワークフロー | 処理の流れを人が設計し、順番通りに実行させる仕組み |
| トークン | AIが文章を処理する単位。利用料の計算根拠になる |
| API | 外部のシステムからアプリを呼び出すための接続口 |
Difyは「業務を分かっている人が、自分の手でAIアプリを作って試せる」ことに価値があります。逆に、それが不要な場面では他の手段の方が早いこともあります。
Difyの本質は、開発を不要にすることではなく、試す回数を増やせるようにすることです。作ったものを業務の中で動かし、答えられなかった質問を拾い、指示と資料を直す。この繰り返しを業務部門の手で回せるようになった時点で、生成AIの活用は検証段階を抜けます。